苺のショートケーキ
クリスマスや誕生日といった特別な日に欠かせないのが真っ白いクリームに赤い苺がちょこんとのったショートケーキ。最近では色々な種類の生地やムースが出てきて、ケーキもどんどん複雑になっていくけれど、ショートケーキの魅力はそのシンプルさにあると思います。なめらかですっと溶けるクリームに卵の風味豊かなスポンジ、甘酸っぱい苺は食べ飽きることのない普遍的なおいしさを持つ組み合わせです。今回はスポンジ生地に打つシロップやクリームにお酒を効かせて、食事の後やお酒と一緒でも軽く食べられるショートケーキを作りました。
【材料】15cm型1台分
◎スポンジ生地
・卵 2個
・グラニュー糖 60g
・薄力粉 60g
・溶かしバター(無塩がおすすめ) 20g
◎シロップ
・お砂糖 68g
・水 50g
・洋酒(マラスキーノやブランデーなどをお好みで) 50g
◎中に挟むクリーム
・生クリーム(45%がおすすめ) 1パック
・お砂糖 16g
・洋酒 小さじ1
◎組立て&仕上げ
・生クリーム 1パック
・お砂糖 16g
・洋酒 小さじ1
・苺 1パック
【使う道具】
オーブン、計り、15cmケーキ型、電動泡立て器、ゴムベラ、パレットナイフ、絞り袋、口金、デコレーション用コーム、ケーキバール(生地を均一にスライスするための道具、無ければ目測でもok)、刃渡りの長いパン用ナイフ
【作り方】
◎下準備
オーブンは180℃に余熱し、ケーキ型には薄くバターを塗った後に薄力粉をまぶすか、クッキングシートを丸や帯状に切って、底や側面に張りつけておきます。
1.まずはスポンジ生地を焼きます。ボウルに卵と砂糖を加え、よく泡立てます。泡立て器で掬ってみて、流れずにもたっと落ちて跡が残るくらいまで泡立てます。
【ポイント①】
ここで泡立てた気泡がスポンジを膨らませてくれます。しっかり泡立てましょう。
2.(1.)に薄力粉をふるいながら加え、ゴムベラで切るように混ぜます。粉気が完全になくならないうちに溶かしバターも加え、生地にツヤが出るまで混ぜます。生地を型に流し、180℃のオーブンで40分ほど濃いキツネ色になるまで焼きます。手で軽く押すとふわっと押し返してくるような弾力があるのが焼き上がりの目安です。
3.生地が焼き上がったら型を10cmくらいの高さから落としてショックを与え、型から外して冷まします。そして冷ましている間にシロップを作ります。鍋に砂糖と水を加えてグツグツ沸かし、砂糖が溶けたところで50g計り、洋酒と合わせたらシロップの出来上がりです。
4.生地は冷めるのを待ってから1cm厚に3枚スライスします。とても柔らかくて脆いから気をつけて。スポンジの間に挟むクリームはボウルに生クリーム、砂糖、洋酒を加え、泡立て器で掬うとツノが立って軽く先が曲がるくらい(8分立て)に泡立てます。苺も4個ほどヘタを落としてスライスしておきましょう。
【ポイント②】
生クリームは常に冷やしておかないと、すぐにボソついて黄色くなってしまいます。ボウルの底に氷水を当てて、使わない間は冷蔵庫に入れておきましょう。
5.スポンジを優しく回転台の上にのせ、シロップを打ち、生クリームを塗り、苺を並べます。再び、いちごを覆うように生クリームを塗ります。次にのせるスポンジには両面ともにシロップを打ち、同様にして、もう一段組み立てます。
6.残った生クリームで組み立てたケーキの表面を薄く下塗りし、冷蔵庫で休ませておきます。
7.仕上げに塗るクリームを作ります。(4.)と同様に生クリームを泡立てて、今度は泡立て器で掬うと筋が残って、小さなツノが立つくらい(7分立て)に泡立てます。ケーキを冷蔵庫から出し、上にクリームをたっぷりのせ、パレットナイフで平すと同時に側面へ落とし、クリームを足しながら、側面も塗っていきます。まんべんなく塗れたら、パレットナイフで角を掬い取り、デコレーション用のコームで表面に筋模様をつけます。残ったクリームは口金をはめた絞り袋に入れ、好みの形に絞っていきます。仕上げに苺をのせたら出来上がりです。
【ポイント③】
生クリームはパレットナイフで塗っている間も変化していきます。なるべく少ない回数で手早く塗ると綺麗に塗ることができます。
「パイ包み焼き」のパイ
世の中には「パイ包み焼き」という料理がある。
ナイフやフォークを突き立てなくとも「パリパリ」と聞こえてきそうなほど香ばしく焼かれたパイに肉や魚、時にはスープなどが包まれている小洒落た料理だ。
私がはじめて「パイ包み焼き」を食べた時、パイから漂うバターの豊かな香りや中身が分からないワクワク感、パイを割った瞬間に立ち昇るおいしそうな匂いに、それはもう感動した。以来「パイ包み焼き」は私の中でご馳走の代名詞となった。
しかし事件は起きた。きっかけはちょっとしたお祝いに彼女とレストランで食事をしたことだった。久しぶりのフランス料理に心を躍らせてメニューを見ると「パテのパイ包み焼き」が目に留まった。フォアグラやトリュフが入ったパテだけでも十分なご馳走なのに、なんとそれがパイに包まれているというのだ。いつもは彼女に急かされて、ようやく決まるメニュー選びがあっという間に終わった。大の肉好きである彼女も同じものを選んだ。
「ふたりで違うものを選んでシェアしようよ!」そんな野暮なことは言わない。たまのフランス料理なのだ、一人一皿思う存分に楽しもうではないか!という意気込みである。
ほどなくして目の前に運ばれてきた「パテのパイ包み焼き」はそれは見事だった。パテの真ん中にはフォアグラが鎮座し、上にはキラキラと輝くコンソメゼリーの層まである。それらを金色のパイが美しく縁取りしていた。
濃厚な肉の風味がガツンとくるパテに、卵とバターの風味が優しいパイはぴったりで、私は夢中になって食べ進めた。いよいよ残りがひと口かふた口となったところで隣を見ると、彼女のお皿にはなんと壊れた額縁のようにパイだけが残されていたのだ。
「食べないの?」と聞くと驚きの答えが返ってきた。なんでも彼女の言うことには「パイ包み焼きのパイはあくまで脇役!主役である中身をおいしくするためのものであって、ポール・ボキューズも必ずしも食べなくていいって言ってた!!」ということだった。現代フランス料理の父の名前を出されると急に信憑性を帯びてくる。まさにカルチャーショック。
その話が本当かどうかは分からないし、きっと作り手によっても、料理によっても変わってくるだろう。
ただ、私はボンタンアメのオブラートが好きだし、塩釜焼きでは周りの塩で酒を飲むのが 大好きだ。さすがにホイル焼きのホイルは食べないけれど、桜餅は葉っぱごと食べる。
たしかに彼らは脇役かもしれない。でも、だからと言って、ペリッと剥がしてポイ!では可哀想だ!!貧乏性だの、食い意地が張っているだの言われようとも気にしない!私は、私だけは食べ続けるぞ!
そんなことを独り熱く思いながら、彼女の分のパイもきれいに平らげたら、デザートに辿り着く頃には、すっかりお腹が張って椅子から立てなくなっていた。
でも、大丈夫。そんな時にはデザートにちょこんと添えられたミントの葉を噛めば、たちまち気分は爽快に、別腹が働くからである。
やっぱり私は脇役が好きだ。